ここでは,spwaveの使用方法について具体的な例を挙げて説明します.
spwaveはもともと音声ファイルの切り出しのために開発されたので,切り出しには便利なようになっています. 普通に音声ファイルを切り出す場合は,切り出しを選択します. この場合は現在のウィンドウにある音声ファイルに対して処理が行われます. 余分な区間が含まれていた場合は,その範囲を選択し,削除を 実行します. 編集が終了したら,ファイルを保存して下さい. 保存が実行されるまで元のファイルは変更されません.
現在のウィンドウを残しておきたい場合には,取り出しを実行します. これにより,選択されている範囲が別のウィンドウで表示されます. 新しく開いたウィンドウは,他のウィンドウと同様に編集を行うことができます. このウィンドウに表示されている音声ファイルは, この時点では,ファイル名がありませんので,名前を付けて保存... を実行して保存する必要があります.保存を選択しても同じ動作になります. この取り出しの処理は,選択された範囲の中でマウスの左ボタンをクリックし, それをそのままウィンドウの外までドラッグして離すことによっても可能です.
また,切り出しのとき,録音した大きなファイルがあって,それをいくつかの部分に切り出して 連番を付けて保存するということが良くあると思います. これをそのままやる場合,切り出して名前を付けて保存を繰り返すことになりますが, あまり効率が良いとは言えません. こういうときは,取り出しと自動保存を実行します. これにより,その選択範囲が取り出され,そしてその取り出されたファイルに自動的に名前が付けられて保存されます. さらに,取り出されたファイルの範囲が元のウィンドウにラベルとして表示されます. つまり,このラベルにより,切り出した範囲のログが残ることになります. 自動保存に関する細かい設定は,設定ダイアログの 自動保存で行うことができます.
spwaveは,容易に音声ファイルの形式を変換することができます.
spwaveは,対応ファイルが多いため,ファイル形式の変換にも使用することができます. 単にファイル形式を変換したいだけであれば,ファイルを読み込んで, 名前を付けて保存...で所望の形式で保存するだけです. 例えば,読み込んだファイルをWAVEファイルに変換したい場合は, 名前を付けて保存...を選択し, 「ファイルの種類」が「By Extension」になっていることを確認して ファイル名を".wav"で終わらせます. AIFFファイルで保存したい場合も同様にしてファイル名を".aif"で終わらせます.
ビット/サンプルとは,1サンプルあたりに用いられているビット数のことで, 振幅がどれだけの精度で表現されているかを示しています. 値が大きいほど正確に振幅が表現できることになります. ビット/サンプルを大きな値に変換すれば,処理誤差がそれだけ小さくなるので, 高品質な処理を行いたい場合は,最初に変換してしまうのも一つの手です. なお,spwaveでは,ほとんどの内部処理は64ビットで処理していますが, 処理後は元のビット/サンプルに丸められます. そのため,繰り返し編集を行っていくと劣化が少しずつ蓄積していきます. あらかじめビット/サンプルを大きな値に変換しておけば劣化の蓄積は小さくなります.
ビット/サンプル変換を行うには, ビット/サンプル変換...を選択します. すると,ダイアログが開くので,所望のビット/サンプルを選択してOKを押します. 32 (float)というのは32ビット浮動小数点を示しています. ただし,現在のバージョンでは,浮動小数点フォーマットの音声の再生はできません.
音声の研究では貼り付けなどを行う機会がそれほどないので実装が遅れていたのですが, バージョン0.6.1から対応しました. spwaveのクリップボードは,他の音声ファイルと同様に編集を行うことができるため,結構便利です. 具体的には,クリップボードウィンドウ...を選択することにより, 現在クリップボードにコピーされている波形を新しいウィンドウで表示します. このウィンドウは,他のウィンドウと同様に編集を行うことができます. spwaveでは,クリップボードウィンドウに現在表示されている内容がクリップボードの内容に対応します. すなわち,編集を加えた場合には,編集後の内容がクリップボードの内容ということです. 取り消しや,やり直し も同様に可能で,取り消した場合には取り消し後の内容がクリップボードの内容に相当します.
例えば,ある範囲をコピーして,貼り付けたいたけども,コピーした範囲を 少し小さくしたいとかいうときに,クリップボードウィンドウ... を選択してクリップボードの内容を表示し, 切り出しや削除 で波形を編集します. 編集が完了したら,対象となるウィンドウの所望の箇所で右クリックしてポップアップメニューを表示させ, 貼り付けなどを実行します.
なお,spwaveは,クリップボードを一つだけ持ちます. すなわち,別の範囲をコピーすると前のクリップボードの内容は全てクリアされます.
研究で使う場合は,なんらかの処理をした音声ファイルと元の音声ファイルを 比較することが良くあると思います. こういう場合は,まず二つのファイルを別のウィンドウで開いておきます. そしてどちらかのウィンドウの所望の区間を拡大し,同期を選択します. すると,同じ区間を二つのウィンドウで表示させることができます. 波形の振幅値を比較する場合は,できるだけ波形を大きく拡大して下さい. 拡大率が小さい場合は,時間情報と振幅情報が正確でないことがあります.
また,どちらかのウィンドウで範囲を選択した後, 全部を同じ範囲に を選択すると同じ範囲で他のウィンドウの範囲を選択することができます. このようにすれば,同じ区間で再生や分析などを行うことが可能です.
spwaveでは,様々な音声の分析を行うことができます. 分析を行う場合はポップアップメニューの分析以下から選択します. 分析を行うと,新たにウィンドウが一つ作成されます. 継続して分析を行った場合には,このウィンドウが再利用されます.
分析の設定ダイアログで, 分析の設定を変更することができます. ダイアログを表示したままにしても,spwaveの操作は継続できます. 分析ウィンドウがある場合には,ダイアログの適用ボタンを押すとその内容が即座に分析に反映されます.
また,分析したスペクトルや音声波形をきれいに印刷したいという 要望はあるかと思いますが,現在はまだサポートされていません. ただし,バージョン0.5.2から時間軸付テキストファイルを出力できるようになりました. これは,時間軸の値が1行目に入っているテキストファイルです. これをgnuplotなどのプロットツールに読み込ませれば,印刷することも可能です. バージョン0.6.1以降では,スペクトルも同様の方法で印刷可能です. 名前を付けて保存...において, ファイルの種類に「Text with Time」「Text with Frequency」を選択すれば, それぞれ音声波形,スペクトルをgnuplotなどで読み込める形で保存することができます. なお,スペクトルや音声波形の表示画面は必ずしも正確に表示されていませんので キャプチャ画面を研究資料などに使用するのはお勧めできません.
なお,バージョン0.6.11からは,スペクトルの時間変化を示す「スペクトログラム」の表示(いわゆる声紋表示)が可能となりました。 スペクトログラムメニュー の中から所望のスペクトログラムを選択すると,音声波形がスペクトログラムの表示に変わります。
Last modified: "2004-07-20 16:01:28 hideki"