「カレールーのパッケージにおける甘口,中辛,辛口の色しらべ」に関する数理的考察
著者:小中英嗣(名城大学理工学部),2016/8/31執筆
「一対比較法」は,二つを比較した勝敗(優劣)の結果から,複数の候補の順序付けを行う手法です.今回の場合は勝敗を「より辛い」こととします.そして,各銘柄での辛さを比較した対を取り出します.具体的には,ハウスのバーモントカレーは甘口・中辛・辛口の順に赤・緑・青ですので,「緑は赤より辛い」「青は赤より辛い」「青は緑より辛い」の三つの対を抽出します.これを全28銘柄に対して行い,その勝敗からどの色がどの程度辛さを表しているのかを計算します.
試した方法は以下の三つです.
早速結果とともに示します.
勝率による比較
単純に,その色の通算の勝率を計算したものです.
黒・茶は勝率が1,つまり使われている場合は各銘柄で最も辛い商品を示しています.
主固有値による比較
主固有値(の絶対値)による方法も試してみます.
具体的には,勝率から構成される行列を

としたとき,固有値問題

を解き,そのうち絶対値が最も大きい固有値

(主固有値)に対応する固有ベクトルを求めます.
この手法は対戦数が少ないと値が極端になりやすいため,2回のみ使用されいている茶・金の評価が勝率とはかなり異なります.
レーティング(イロ・レーティング)による比較
勝率のみではどの色よりも辛いと評価されているのかが反映されません.これを考慮する手法はいくつか提案されていますが,今回はイロ・レーティングを若干修正した手法を使います.
イロ・レーティングはチェスでは公式の手法として,それ以外には囲碁や将棋でも棋士の強さの評価に利用されています.詳しく知りたい方はWikipediaが良くまとまっているので,こちらをご覧ください.(
イロレーティング(Wikipedia)).
本家イロレーティングから若干修正しています.
- 本家では1500を平均として足しているが,ここでは足していない.
- 本家では試合ごとに1回のみレーティングを更新しますが,今回は値が収束するまで更新を繰り返しています.その際,全勝・全敗はレーティングが発散してしまうので,ちょっと値をいじっています(0.99と0.01にしている).
利用されている色の組み合わせがあまり多くないため,勝率と似たような結果となりました.
まとめ
イロ・レーティングによる色のレーティングを行いました.蛇足ですがイロ・レーティングの名はこの手法を提案した数学者のAlpad Elo氏にちなみます.